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不動点


 |Brouwerの不動点定理|

 不動点(fixed point)の存在、不在を示す事はトポロジーにおける一つの重要なテーマであるらしい。不動点とは、f : X → Xに対して、文字通りf(x)=xとなる点のことである。閉区間上の実数値関数で考えるなら、これは高校で習った中間値の定理に該当する。
 有名なのはBrouwerの不動点定理という奴である。これは閉円盤D^n間同士の任意の連続写像は不動点を持つというもの。より一般には、D^nをcompactで可縮な空間としても成り立つ。
 他にも色々とバリエーションがあるようである。経済学で有名なのは、Brouwerの一般化である角谷の不動点定理だろうか。需要供給に見る一般均衡や、ゲーム理論におけるナッシュ均衡の存在を不動点定理によって示したことは非常に興味深い。トポロジーと経済学の分野での繋がりを垣間見ることができる。

 Lefshetzは不動点指数というものを導入して、不動点の存在・不在をより簡略化して考えた。不動点指数は多様体、あるいはENRと呼ばれる空間のendmorphismに対して定義されるホモトピー不変量である。加えて、写像の加法、乗法、可換に関してもcompatibleになっている。一方、chain complexにおけるendmorphismでもLefschetz数、あるいはトレースと呼ばれる不変量が定義される。多様体レベルでの不動点指数とそのcomplexレベルでのLefshetz数が一致するというのが、Lefshetzの不動点定理である。Lefshetzの不動点定理については【中岡99】の第3章後半に載っている。
 Lefshetzの不動点定理は色々一般化がなされているようで、例えばequivariant versionについては、【Pon09】がある。